第一話 −終わりを告げる者−



青年は、自分の頬をつねってみる。

「痛い・・・」

それは、これが夢じゃないことを再確認させた。
この状態は現実に起こっていて、まぎれもない真実なのだと。

「俺・・・どうしてこんな所に・・・。」

訳が分からなかった。
どうしようもない感情が胸を絞め付ける。
どの位経ったのか分からなかった。でも崩れたまま立ち上がれない状態が続いていた。

「とにかく・・・立ち止まっていても、何も始まらないな。」

これは現実だ。受け止めるには、もちろんまだまだ時間はかかる。
だが、このまま居ても何かが変わるわけでもない。
青年は一つ溜め息を付き、その場から離れた。
周りを見渡せば、草原と広がる空。
そしてどこか懐かしさを帯びた風景。
そのまま、青年は何かに導かれるように、一つの小屋へと向かった。

「・・・この小屋・・・。」

中へと入っていく。
辺りを見回すが、それは紛れもない青年の家。
自分が元居た世界にあったはずの家だった。
だからこそ、夢だと思いたかった。全ての現状を。

「何で俺の家はココにあるのに・・・何かが違うんだ・・・。」

青年はまた悩み、頭を抱えた。
その時だった。

トントントン・・・

小屋の戸を叩く音がした。

「!?」

恐る恐る戸に近づく。
その途端だった。

「サンダーボルト!!!」

戸は簡単に破壊された・・・・。

「なーんだ!居るじゃありませんのっ!」
「え・・?」
「居るならちゃんと返事しなさいですわ〜」

謎の女は、言うなり青年の家の中へと足を踏み入れる。

「・・・・。」

何だ、この図々しい女は。
いきなり人ん家の戸を破壊しておいて、部屋へずかずかと侵入してきている。
青年は、頭がパンクしそうになっていた。

「何なんだ!貴方はっ!!」

青年の怒鳴り声に対し、思い出したかのように、青年を見つめる。

「あら・・・ごめんなさいねー。ちょっと気付いたら知らない場所に居たものだから、とりあえず近くの人にお話でも聞こうと思ってたんですの。」
「・・・戸を破壊しておいて、言う台詞か?それ。」
「おほほほ。気になさらないで。」
「気にするわっ!!!」

青年は熱く感情を剥き出しにしているのに対し、女はとても冷静だった。