第二章



『これから、どうやって出口を探すんですか?』

フェルがうきうきとした様子で、コルアに問いかける。
コルアは気の抜けたような顔をして・・・と言ってもイカだからよく分からないが。

「何だよフェル!!そんな事も知らないで旅しようとしてたのか?」
『え?…だって、僕は……冒険なんてした事無いから…・・。』
「ん?…何か言ったか?」
『う、ううんっ!!』

精一杯体を振り、何も言ってないのをアピールする。
コルアはそのまま前へと向き直り、他を見やる素振りをする。

「まず!冒険者は、周りの看板や人、アイテムを売っている奴や、情報屋に聞くのが先だ!」
『情報収集…ですか?』
「そうだ!!」

自信満々に言うコルアを見つつ、言いずらそうな感じでフェルは口を挟む。

『あの〜…とても言いづらいのですが…ここには、僕以外誰もいませんよ。他の人たちは、皆ここから東へ行った【シー・ランド】という所にいます。』
「!!」

コルアは驚いたように、振り返る。
フェルは至って冷静に淡々と説明し始めた。

『ここは海です。元居た人間界とは違うルールが存在しています。』
「はぁ〜?ルール?…何だよそれ?」

ルールという言葉にコルアは頭の上に「?」をいっぱい浮かべる。
フェルは気にせず説明を続けた。

『この海には、3つのルールがあります。
1つ、ここに存在する生き物に手出しをしてはいけない。
2つ、神【アクア】の言葉は絶対である。
3つ、【シー・ランド】には、この海に1年以上前から住む者だけが通行できる。』

「!?」

『そう…。【シー・ランド】に入れるのは、前から住んでいる僕だけ…。コルアさんは、来たばかりだから、通行出来ない可能性が高いんです。』

「何ーッ!?ちょっと待てよ!それじゃあ、俺は一生こんな所から出れないのか?!」

『まだ、はっきりした事は言えませんが…恐らく。』
「くそっ!!せっかく道が開きかけたのによ!!」

フェルは悔しがるコルアを見つめながら会話を続けた。

『だけど…それは僕が何とかします!!』

強い眼差しでそう言い放つフェル。不安げな表情をしながら、コルアはフェルを見つめる。

「…出来るのか?」
『……心配しないで下さい。』

そう言うとフェルは笑顔を向け、どこかに向かって行った。

「………。」

コルアは複雑な表情(何度も言うがイカです。)をしていた。

『………。(こんな所で諦めたら…僕の夢は一生叶わなくなる!!…愛するリビアに会う…夢が……。)』

一方放置されたコルアの方は、一人取り残されてどうしていいか分からず、辺りを見渡していた。
しかし時期にそれも飽き、座り込むようにして下の砂場を触っていた。

「…フェル…何してんだろ?」

触れる砂の感触・・・。
イカの姿になった自分。
どれも、現実味がなくて・・・触れた砂も簡単にサラサラと落ちていく。