第五章


   【クルッサム】

「はぁ…はぁ……。」
『はぁ…はぁ…・・。』

二人は息を切らして、クルッサムの町の入り口で一息つく。

「やっと…着いた、な…っ。」
『ええ……はぁ…っ』
「先に、宿…とるか…?」
『そう、ですね…。』

息切れしつつ、宿屋へと向かった。

       宿屋

「はぁ〜…・・ゆっくり出来るのって良いな〜……!!」

ベッドへと沈みながら、呟くコルアと同様に、フェルもベッドへと突っ伏していた。

『ええ…。何か、やっと落ち付きましたね……。』
「ああ…。それにしても……この海って、怖えな!!」
『ここまで来るのに、何度か食われそうになりましたからね……。』

フェルは思い出しながら、肩をがくがくと震わせる。

「ああ…あのサメみたいな奴!!あいつ、俺達を一飲みにしようとしてたぜ!!」
『ホントですか?!僕、逃げるので精一杯でしたから、そこまで気付きませんでしたっ;』

回想中……………………・・

「ここまで来れば、あの女も追って来ねぇだろ。」
『そうですね…【ギルア】の街からかなり離れましたし…。』
「いや…待て。俺達、休めねえみたいだぜ……?」

コルアが何かに怯えるように言うのと同時に、止めかけていた足を再び動かし始める。

『コルア?』
「フェル!!逃げるぞ―――――――っ!!!!!!!」
『え??』
「サメだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

サメは、大きな口をあけて近付いてくる…。

『コルアー!!もっと早く来ないと…食われるよ!!!!』

フェルは振り返りながら、コルアに焦るよう促す。

「俺は……もう…駄目だ……。」

ばたり…と、効果音が付けたら、ちょうどよさそうな程、コルアはその場で倒れた。

『え?!』

しかし、サメは、倒れたコルアを無視して逃げるフェルを追いかける。

「………。(すまねえ、フェル。俺は、この間に逃げるぜ…っ!!)」

サメが通り過ぎたのを確認すると、コルアは立ち上がり、そっと別の方向へ逃げ始める。

『ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!何でこっちに来るんだよ―――――っ!!!!!』
「フェル……後は頼んだぞっ!!」
『!!!』

一言言い逃げ去るコルアを視界に入れると、もの凄い勢いで、コルアの元へと走ってくるフェル。

「げっ!?」
『コルア――――――!!!!!!』
「うわぁぁ―――っ!!!こっちに来るなぁぁぁぁぁ!!!!!!」

フェルは、コルアの元まで行き、一緒に逃げながら、もの凄い血相でコルアへと詰め寄る。

『今一人で逃げようとしたなぁ〜?』
「え?…・・そ…そんなことしねえよ…!!」

回想終了…………………………………

『って…コルアあの時、僕を置いて一人で逃げようとしたよな〜?』
「え?…そんなことあったっけ?」

目を泳がせ、口笛まで吹き始める。

『あー!!とぼけたなぁーっ?!』
「だぁぁ、もうそんなの、いちいち覚えてらんねえよ!!
明日は【キレンダ=マーテル】の家を探して、尋ねるぞっ!!」
『あー!!今ごまかした!!!』
「ごまかしてねえよ!!」

そんなこんなで、二人はにぎやかな夜を迎えたのでした。