第三章



ガタンと音をさせ、奥の扉からフェルが戻ってくる。

「…フェル…!!話は…終わったのか?」
『うん…。さぁ、行こう!!』
「よーし!!さっそく、情報収集だな!!」

二人はPUBから出る。

『じゃー、僕はあっちで話を聞いてきます!!』
「ああ、じゃあ俺はこっちで…情報が集まったら、またここで落ち合おう!!」

そう言うと、二人は別れて聞き込みを開始した。
フェルは公園のような場所に佇んでいたイソギンチャクに話を聞いていた。

『あの〜…すみません!!この海の出口について、話を聞きたいんですが。』

「ん〜…そうだねぇ。ここから南に行った所に、【クルッサム】っていう、ここよりものすごく大きい町があるんだけどね。
そこに、昔この海の出口を求めて冒険をしたっていう人がいるって話を、聞いたことがあるよ。名前は確か…キレンダ=マーテル…だったと思うよ!」

『ありがとうございます!!』

一方のコルアはPUBにいた、暗い人魚の少女に話を聞いていた。

「ちょっと良いかー?この海の出口についての話を聞きたいんだが…何か、知ってること無いか?」
「………。」
「あの〜…。話聞いてますか〜?」

コルアが少女の前で手を振る動作をする。

「…出口…?」

フードを被った少女はボソリと発し、顔を少し上げた。

「あ、あぁ。」
「この海からは…誰も…出られない…」
「は…?」

コルアが不思議そうに言うと、少女は不気味な笑みを浮かべて、話を続けた。

「出られるとすれば…神と契約できた者のみ……」
「…神と?」
「神は…【スカイ・パーク】にいるわ…。」
「そこへは…どうやって行くんだ?!教えてくれ!!頼む!!」
「…教えてあげてもいいけれど……条件があるわ…」
「教えてくれるなら、何でもするつもりだ!!…まぁ、条件にもよるけどな。」
「条件は…私をここから…解放して……」

少女は光り輝く石を取り出し、コルアに差し出した。

「石…?」

コルアが石を受け取ろうとしていたとき、周りを通りがかった男が声を張り上げた。

「兄ちゃん!!…そいつの言う事は間に受けない方が良いぜ!!」

コルアは、石を取ろうとしていた手を引っ込める。
少女は軽くチッと舌打ちした。

「…何でだ?」

コルアは、通りがかりの男へと尋ねる。

「そいつ、昔…人魚の落ちこぼれって言われてたんだ!!」
「落ちこぼれ?」

「なぜそう呼ばれたか…。それはこいつ…昔ここを自分だけ脱出しようと、抜け駆けで神と契約しやがった!!神は、願いを叶えてやるって言ったらしいが、その願いを叶えるのには、神への生贄が必要なんだ!!」

「生贄ッ?!」

「こいつは、周りの帰りたがっている奴を騙して、神への生贄に捧げた……。だが、それで帰れるかと思えば、帰れなかった……。神は人間を生贄にするような奴じゃねえ…。
それにも気付かず、その女は本当に生贄を連れてきた。神はそれに怒り、こいつの魂をある石に封印したんだ…。」

「え?…じゃあ、今…話している人物ってのは…?」

「こいつの…残った怨念の魂さ……。神はこいつの魂を、石に封印しきれなかったんだ…。そいつのこと…皆知ってるぜ!!兄ちゃん、こいつはな…自分の為なら平気で周りの者を犠牲にする…!!!そんな奴さ!!」

「………。」
「………。」
「…じゃあな…兄ちゃんも、あんまり関わらない方が良いぞ!!」

そう言うと、その男はその場を通り去って行った。